人口がうなぎ上りのアフリカの、ゴミ問題が話題になっています。
先日のTICAD(第7回アフリカ開発会議(TICAD7) | 外務省)でもゴミ問題は重視され、今後の廃棄物管理に関する方針などが協議されました。政策レベルでも取り上げられるゴミ問題ですが、すべては個人の出すゴミから来ています。そして、ゴミを収集しているのも個人個人の作業員。課題の現場で何が起こっているのか、少し覗いてみませんか。
今回の記事では、西アフリカ、ベナンで私が目にした現行の家庭ゴミ収集の仕方をレポートします。
もくじ
ベナンの都市ジュグーの著しく低い家庭ゴミ収集率
現場の様子をご紹介する前に、数字で家庭ゴミ収集の現状を見てみましょう。私が住んでいるベナン北部の都市ジュグーでのゴミ収集に関する簡単な情報は、以下の通りです。
- ジュグー市中心部の人口 106,351人(2017年)
- 一人当たりが一日に出すゴミの量 0.46kg(2000年)
- ジュグー市中心部家庭ゴミ収集率 6%
- 家庭ゴミ収集事業を担う団体数 2
- ゴミ収集車数 2
家庭ゴミ収集率が6%ですので、市中心部に住む人々が出すゴミの94%が収集されていないということですね。計算すると、収集されずに各家庭で燃やされたり、家の裏や道に投棄されたりするゴミは45トン986キロに及びます。
ちなみに一人が一日に出すゴミの量0.46kgという数字は、私の地元の静岡県浜松市に住む人々の一人当たり一日に出すゴミの量と、大差ありません。家庭ゴミが収集されていないと、単純にこのように道にゴミがあふれることになる、ということがわかります。
そもそも家庭ゴミ収集がこんなにも普及していないのは、人口10万人以上の領域なのにたった2つの団体しか参画しておらず、そのうえ2台のごみ収集車しか稼働していないから。ゴミ収集車と一口に言っても、日本や先進国で主に使用されているゴミ収集車ではなく、ゴミの圧縮機能もないただの三輪車です。
これが、ひとつの都市に2台。とても小規模ですよね。
西アフリカ、ベナンで家庭ゴミ収集に同行してみた
数字で現状を把握したので、ここからは実際の現場を写真とともにお伝えします。今回の記事でお伝えするのは、ジュグー市内で家庭ゴミ収集を行うAJEDという団体のお仕事の様子です。
朝10時 ゴミ収集車に合流
もともとこの日はゴミ収集に同行するつもりはなかったので、遅い出だしとなりました。本来ならば朝7時ごろから収集員は作業をしています。
AJEDでインターンをしている友人に別件で電話を掛けたところ、彼はちょうどゴミ収集車にひっついて仕事をしているとのこと。私は以前にも家庭ゴミ収集に同行したことはありましたが、改めて住民が何をインセンティブに家庭ゴミ収集契約を結ぶのか知りたかったため、よい機会だと思い合流しました。
運転手が一人と、補助員が一人の計2人。それに加え、インターン生が収集し忘れがないようにゴミ収集車を誘導していました。
朝10時~12時半 住宅地でゴミ収集
彼らと合流してから2時間半ほど、ホテル1軒と家庭12軒を回ってゴミを収集しました。
日本では税金をもとに自治体により家庭ゴミ収集が行われていますが、ベナンでは各家庭が収集団体と契約をします。そのため、「この家のゴミは収集するけど隣の家のゴミは知らない」という風になります。契約家庭も点在しているため、時間をかけて広い範囲を回る割には収集の成果は小さいなぁという印象です。
AJEDにはゴミ収集車が1台しかないので、その1台が故障したら修理が完了するまでゴミ収集はできません。それもあって定期的なゴミ収集が現在はできておらず、家庭ゴミ収集契約をしている家であっても家の人が全員不在の際はゴミを収集することができません。何曜日の何時ごろにゴミ収集に来るのかもわからないのに、ずっと家で待ち続けることはできませんよね。ゴミ箱を家の外に出しておくのは、近所の人に中を漁られたり、道を歩く山羊たちに漁られたりするのがイヤなんだそうです。
また、ゴミ収集のため地域を巡回している際は常に炎天下。収集員の体力的にも楽な仕事ではありません。
午後12時半 街の外れのゴミ集積所へ
ゴミ収集車の荷台がいっぱいになったら、街の外れのゴミ集積所まで運びます。街の中心付近にある市役所から、8分ほどかかります。
ゴミ集積所と言っても、自治体が管理している土地ではありません。農業をしている個人の土地で、この地にゴミを運んでもらってそのままそこでゴミを燃やし、肥料にするそうです。たしかに、ゴミ集積所の周囲ではとうもろこしやキャッサバ芋が栽培されていました。そこも以前はゴミを置いておく場所だったとか。
だいたい乾季は街の外れのゴミ集積所、雨季には自治体指定のゴミ集積所にゴミを降ろします。自治体指定の方は街中からもさほど遠くないのですが、
- 住宅地からほど近いこと
- すぐ隣に川が流れていること
- すぐ隣に畑があること
などの点から、問題視されています。川で遊ぶ子供がいたり、川の水を使って畑に水やりをしたりしているので、土壌汚染だけでなく水質汚染も危惧されています。
さて、ゴミ集積所では手作業でゴミを荷台から降ろします。この作業に10分程度かかっていました。ゴミを降ろし終えたら、再び街に戻って収集を続けます。
午後13時前 ゴミ除去完了、街中心部へ戻る
ゴミを降ろし終えると、再び街の中心部へ戻ってゴミ収集作業を続けます。
私がこの日同行したのは、ゴミ収集エリアとゴミ集積所の一往復のみ。ですが、この日は合計3往復して作業を終了したそうです。だいたい一日かけて50軒程度分のゴミ収集というペースです。
ベナンで家庭ゴミ収集に同行してわかった良い点と、改善点
ゴミ問題を抱える都市が現在どのようにゴミ収集しているかをなぞりました。彼らのゴミ収集に同行した私が考える、現行のゴミ収集の仕組みの良い点と改善できる点について少しまとめておこうと思います。
ベナンの現行の仕組みの良い点
現在のやり方の良い点は、小回りの利く三輪車を利用している点です。
三輪車はたしかに積載量はあまりありませんが、道路が未舗装のベナンの住宅地に入り込んでゴミ収集するなら、大きなトラックなどでは少し難しいかと思います。道ががたがたで、家庭と家庭を巡回するのも一苦労。その点三輪車は小さい分小回りが利き、道の段差などを回避できます。
狭い小道にも入れるので、家庭のゴミをわざわざ外の道路まで持ってくる必要もありません。
ベナンの現行の仕組みで改善可能な点
私からすれば良い点はひとつしかないのですが、改善できる点はたくさんあります。
- ゴミ収集契約家庭が点在しているため、移動距離のわりに成果は小さい点
- ゴミ収集契約家庭が点在しているため、収集し忘れが多発する点
- ゴミ収集契約家庭が留守の時はゴミ収集ができない点
- 積み下ろしが自動ではないため、時間がかかる点
- 三輪車の積載量が小さく、何往復も必要な点
- ゴミ集積所が住宅地から遠い点
1と2はゴミ収集の契約をとるときに地域を絞るなどしてもっと戦略的に家庭にセールスをすれば、改善できます。
3は、例えば収集する側が契約家庭に蓋つきの固定ゴミ箱を家の前に設置するなどすれば、解決。
4と5は使う三輪車の機能の問題。そして6は行政との話し合いが必須でしょう。
私がベナン人らと立ち上げをしているNGOも今後家庭ゴミ収集に参画していく予定ですので、具体的な事業計画にこれらの改善点は盛り込んでいきます。
まとめ
ゴミ問題と言っても、なかなか実際にゴミ問題を抱える国や地域の実態はあまり知られていないのではないでしょうか。とにかく「地球に優しく!」と言って3Rを唱えたり。ゴミの削減やリサイクルももちろん大切ですが、まず地域がゴミ収集システムをもつことも欠かせません。
西アフリカでゴミと言えば!ゴミを砂漠に撒く日本人教授も。