西アフリカに位置するベナンでは、公用語としてフランス語が話されます。
お隣のトーゴやブルキナファソ、ニジェールなどと同様フランスに植民地化されていた過去があるためです。
ところが、ベナンで話されるフランス語は、フランス人が話すフランス語とは少し違います。私はそれを、ベナンス語と呼びます(ただの造語です)。
ベナンに3ヶ月滞在したベルギー人の友達の意見を参考にしつつ、ベナンス語のあるある表現をさくっとまとめてみました。
1.Tu as fait un peu? チェアフェ アンプ?
(直訳:ちょっとした?/Did you do a little?)
午後に友達と会ったとき、「今日はもう働いた?」のようなニュアンスで問いかける一言です。私の知っている日本語に訳すのが難しいのですが、ざっくり「今日どう?」といったイメージです。
ただしカメルーンやコートジボワールなど同じフランス語圏のアフリカの国でも、これを午前中に聞くと「昨夜はどうだった?」という意味に解釈されるそうです。ベナンでベナンス語の意味では男女問わず聞き合いますが、他の国では特に女性相手には聞かないように要注意です。
2.Ce matin? スマタン?
(直訳: 今朝は?/This morning?)
「おはよう」はフランス語でBonjourですね。Bonjourと挨拶し合ったあとにCe matin?と聞くことで「目覚めはどう?」や「よく寝れた?」等含めて「(もろもろの)朝の調子はどう?」という意味になります。便利ですね。
3.Et la chaleur? エラ シャラー?
(直訳: 暑さは?/And the heat?)
2のCe matin?と同様、Bonjourや「こんにちは」に相当するBonsoirのあとに続ける挨拶の言葉です。la chaleur(暑さ)の他にもla fraîcheur(寒さ)やla pluie(雨)、le soleil(太陽)、la maison (家)はどうかなども聞きます。相手を気遣う挨拶の言葉のバリエーションがやたらとあります。
4.Doucement ドゥースマン
(直訳: ゆっくりと/Slowly)
ベナンス語では「気をつけて」や「すみません」という意味で使われます。誰かが何かを落とした時や、自分が人にぶつかったときに言います。フランス人のpardonに代わる言葉です。
5.Tu es là? チュエラ?
(直訳: 君そこにいる?/Are you there?)
これもまた日本語に訳すのが難しい... 「まだいるんだね?」でしょうか。
例えば用事があって部屋を出て、数分後また部屋に戻ってきたときに、部屋の中にいるさっきも顔を合わせた人たちに対して言います。また、複数人でいて会話に入っていけていない人にもかける言葉です(経験談)。
6.Ou bien? ウビエン?
(直訳: 〜でしょ?/Right?)
例えば学校で先生が、「1+1=2, ou bien?」と児童に聞いたりします。または冗談を言ったあと、「Ou bien? (そうでしょ?)ハハハ〜」という風に使ったり。
これを使いこなせるようになると一気にベナンス語上級者感が出ます。
7.On a fait 2 jours オンナフェ ドゥージュー
(直訳: 2日経ったね/ We did 2 days)
「久しぶり」という意味で使います。よっぽど久しぶりの時、あるいは久しぶりと感じるときは3 jours(3日)に増やしたりdes années(数年)に増やすこともあります。
マラリアや交通事故でいつ死ぬかわからない社会で、大切な友人とは毎日会いたい気持ちを表しているように私は感じます。
以上、ベナン特有のフランス語表現でした。
これらの表現は、ベナンにいる50弱の各民族がもつ現地語の挨拶や表現がそのままフランス語になったものです。
日本人は挨拶もなしに本題に入ることがよくありますが、ベナンで人間関係を上手に築きたければ挨拶は欠かせません。挨拶で相手の色々を聞くことで、自分が相手を気にかけていることを伝えられるからです。
温かい、いい文化だな、と思います。